研究の背景
2015年に最終健常確認時刻から6時間以内の急性期脳梗塞、かつ前方循環領域の主幹動脈閉塞を有する症例に対する血管内治療の有効性が示され1-2、脳梗塞症例に対する血管内治療は広く普及した。
血管内治療の適応時間に関しては、2018年にDAWN trial3により、最終健常確認時刻から6-24時間の症例に対する有効性が示された。しかし、対象は年齢18歳以上、NIHSSスコア10点以上、入院前ADL自立(mRS0-1)のICA、M1閉塞例であり、かつ画像解析ソフトであるRAPIDシステムを用いて虚血コアを求め、神経徴候と虚血コア体積のミスマッチを有する症例に限定されている。また同年にDEFUSE3 trial4が報告された。
この対象は最終健常確認時刻から6-16時間の症例であり、RAPIDシステムを用いてtarget mismatch(虚血コア<70 mlかつmismatch ratio≥1.8)を有すると判定された症例に限定されている。本邦の脳卒中ガイドライン2021では、2つの試験で有効性が示された6-16時間は推奨度A、16-24時間は推奨度Bとされている。
その後2023年にMR CLEAN LATE study5が報告され、RAPIDシステムを使用しない方法で6-24時間の患者に対する有効性が示され、現在世界の注目は24時間以降の症例に向けられている。
24時間以降の症例に関して、2022年にJAMA Neurology誌に、SELECT-LATE研究6が報告され、後ろ向き検討ではあるものの、血管内治療の有効性が示唆されている。
現状の問題点として、最終健常確認時刻から24時間以上経過した症例では、血管内治療を施行することの有効性が確立していないだけでなく、健常確認から6時間以上経過した症例に対する治療はすべて造影剤を用いた灌流画像が用いられており、本邦で頻用されている方法とは異なることが挙げられる。この問題点を解決するため、本研究を立案した。
研究の目的
主幹動脈閉塞を認める最終健常確認時刻から24-72時間が経過した脳梗塞患者に対して、従来の内科的治療を基本とする標準治療と比較し、内科的治療に血管内治療を追加することで転帰の改善が見込まれると仮説を立てた。
本研究では、速やかに血管内治療を行う群(血管内治療群:EVT (endovascular therapy) group)と、内科的治療を行う群(内科的治療群:Best medical treatment group)の2群に分け、発症90日後の転帰の違いを明らかにすることで、血管内治療の有効性を検討することを目的とする。
研究代表者
木村 和美 (日本医科大学付属病院 脳神経内科 教授)
研究事務局
日本医科大学付属病院 脳神経内科 鈴木健太郎、齋藤智成、片野雄大
筑波大学附属病院 脳卒中科 早川幹人、細尾久幸